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新型COVID-19パンデミックの中での日本の株主総会

新型コロナウィルス・パンデミックの中、日本政府は、COVID-19の蔓延を避けるために3つの「密」-密閉空間・密集場所・密接場面-を避けるよう、国民に促してきました。

毎年の株主総会は通常、「3密」条件が揃った状況で開催されるため、例年のような形で株主総会を開催することは、諸外国同様に日本でも難しくなっています。日本では、大多数(約66%)の上場企業が3月決算であり、6月末までの株主総会開催が見込まれるので、これは喫緊の問題です。

株主総会運営に柔軟に対応するために、規制当局は様々はガイドラインを発表しています。

  • 経済産業省は2月26日に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」[1]を発表しました。ここでは2つのタイプのハイブリッド型バーチャル株主総会が提示されています。

 

  • 「参加型」・・・オンラインで株主総会を見ている株主は質問や動議を行うことが出来ず、議決権の当日行使も出来ない(議決権は事前行使)。
  • 「出席型」・・・オンライン参加株主も総会出席者と見なされ、質問や動議、議決権の当日行使が可能。

このガイダンスでは、2018年に国会で法務省から示された見解を根拠に、バーチャルオンリー型株主総会は現行会社法上難しい、と説明されています。会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされている一方、バーチャルオンリー型株主総会では「場所」の特定が難しいからです。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は3月に富士ソフトが開催しましたが、現時点ではこれが唯一の事例です。一方、自社のウェブサイトを通じて株主総会を広く同時配信した企業もあります。

完全なバーチャル株主総会が可能に

しかし経済産業省と法務省が共同で4月2日に発表(4月14日更新)した「株主総会運営に係るQ&A」[2]において、「・・・会場に入場できる株主の人数を制限することも、可能・・・その結果として、設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能」との見解が示されました。先に発表された「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」と合わせれば、完全なバーチャル株主総会も実質的に開催可能と考えられます。なお「株主総会運営に係るQ&A」では、他に以下のような見解が示されています。

  • 株主総会の招集通知等において、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために株主に来場を控えるよう呼びかけることは可能
  • 株主総会への出席について事前登録制を採用し、事前登録者を優先的に入場させることは可能
  • 発熱や咳などの症状を有する株主に対し、入場を断ることや退場を命じることは可能
  • 株主総会の時間を短縮すること等は可能

パンデミックを避ける別の解決策は、株主総会を延期することです。しかし株主総会延期に前向きな企業は多くありません。現行法令上、株主総会の実施時期を遅らせることは、総会基準日を3月31日より遅い日付に設定すれば可能です。しかし配当議案が上程される場合、通常期待されているような、3月31日付の株主に配当を受け取る権利が付与されなくなります。ただし、配当の決定を取締役会に権限移譲している企業の場合、3月31日付株主に配当の権利を残しつつ、株主総会を延期することが可能です。

東京証券取引所は4月7日に、「2020年3月期上場会社の定時株主総会の動向(速報版)」[3]を発表しました。この調査によれば、

  • ハイブリッド出席型バーチャル総会の実施を検討している企業・・・4%
  • ハイブリッド参加型バーチャル総会の実施を検討している企業・・・6%
  • 総会の開催日を7月以降に延期するか否か検討している企業・・・6%

でした。

ディップは、株主総会を7月29日に延期すると発表しました。ディップは2月決算企業であり、取締役会決議により2月末の株主に配当を支払うことにしています。また東芝も、連結決算発表の延期と併せて株主総会の基準日を5月15日にする旨、発表しました。

バーチャル株主総会にしても総会延期にしても、企業から事前に十分な情報開示がある限り、機関投資家の議決権行使行動には影響を与えないと思われます。機関投資家はカストディアンやICJ、Broadridge等を通じて、通常、事前に議決権を行使するからです。株主総会に実際に出席を希望する機関投資家はほとんどありません。

困った事態

しかしながら、新型コロナウィルス・パンデミックの中で、別の困った事態が生じています。決算発表の問題です。多くの企業で、決算を締め、財務諸表を作成して監査を完了することが難しくなっています。特に海外子会社を持つ企業では、海外子会社の所在地がロックダウン状態にある場合も多く、深刻な問題になっています。

このような状況を受け、金融庁は4月14日に、有価証券報告書等の提出期限を9月末に延長すると発表しました。また4月15日には、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応についてのガイドラインを発表しました[4]

このガイドラインによれば、企業は、監査済み財務諸表が完成していない時点でも定時株主総会を開催することが可能です。しかしその場合、機関投資家の議決権行使に重大な影響を与えかねません。何故ならば、機関投資家が日本企業の株主総会で議決権行使判断をする際、コーポレートガバナンス等の要因と併せ、企業の財務状況(特にROE)を参照する場合が多いからです。

IHSマークイットの推奨

IHSマークイットのグローバルM&A・コーポレートガバナンス・ チームは、機関投資家、ISSやグラスルイスのような議決権行使助言機関、その他リサーチ機関、カストディアン、それに当然ながら企業など全てのステークホルダーと継続的に交流し、市場の発展・トレンドを綿密にモニターしています。COVID-19による現状は未曾有の危機ですが、コーポレートガバナンスのスタンダードを確立しようとする企業を、資本市場の参加者は決して見捨てません。現状の市場の要請、ベストプラクティスを満たすために、弊社は以下の事項を推奨します。

  • 適切かつ十分な情報を、投資家だけでなく広く一般に、タイムリーに開示してください。
  • バーチャル株主総会は良い方法ですが、株主が適切に議決権を行使し、また取締役会とのコミュニケーションを取ることが出来るように配慮してください。
  • もし決算発表が遅れるのであれば、投資家が財務諸表を基に議決権行使判断が出来るように、6月総会と継続会の組み合わせよりは、株主総会の延期を推奨します。
  • 株主総会延期を決断する勇気を持ってください。
  • 株主総会日程を新たに考える際には、自社の日程だけでなく他社の株主総会スケジュールも考慮し、投資家が総会に出席・議決権行使する機会を得られるように配慮してください。
  • 決算報告や配当に関する事項と合わせ、株主総会に関する方針について開示するにあたり、投資家や議決権行使助言機関と積極的に対話してください。

弊社は投資家、企業双方の視点から市場のトレンドを今後も継続的にモニターし、市場展望リサーチの一環としてアップデートいたします。詳細は、以下にお問い合わせください。

 

IHSマークイット M&A・コーポレートガバナンス・アドバイザリー・チーム.

連絡先:

田原一彦, CFA, kazuhiko.tahara@ihsmarkit.com, プリンシパル・アドバイザー、ESG&ガバナンス担当(東京)

Andreas Posavac, MBA, andreas.posavac@ihsmarkit.com, Global Head of ESG, M&A and Corporate Governance Advisory

 

[1] https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200226001/20200226001.html

[2] https://www.meti.go.jp/covid-19/kabunushi_sokai_qa.html

[3] https://www.jpx.co.jp/news/1021/20200407-02.html

[4] https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200415/20200415.html

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